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遺伝的浮動


遺伝における浮動(genetic drift、遺伝的浮動ボトルネック効果)はある意味純粋に数学(確率論)だと思う。簡単なことなのですが、わかりにくいので、つい忘れてしまう。そこで何度も言っておいた方がいいと思う。ミトコンドリアDNAは母系でしか伝わらず、変異が遺伝するので、系統図を書くことができるが、ミトコンドリアDNAの系統図を書くことができるだけであって、それだけで人類の足跡(どこからどこへ)は難しい。
多人数のある民族に、A、B、Cの三種類の遺伝特性がある場合、数千年経ってもその特性が元の比率で残る場合がある。ところがその民族がなんらかの事情で少人数になってある期間が経過するといずれかの特性だけになってしまう。極端な例では一旦アダムとイブの2人になってそれから再度増えると考えればよい。ミトコンドリアDNAの場合なら一種類になってしまうし、男女のもつ遺伝特性ならば3種類の中から1種類が欠けてしまう。
南北アメリカにはA、B、C、D系統がすべてあるのに途中のベーリング海峡あたりの民族にはAしかないこととかがこれに当たります。


人類史というタイムスケールでは人口の増減は著しいものがありますので、現在ある遺伝特性がある地域に多いからと言って、そこが起源とか北から来た、南から来たという議論をするのは証拠不足。いろんな仮説を立て、どの説明が一番簡単に複雑な状況を説明できるかという科学的なスタンスで議論する必要がある。ミトコンドリアDNAだけでなく、たとえばヨーロッパに住んでいるのは白人ばかりというような形態的な分析と兼用して議論する必要がある。遺伝的浮動に関して言えば、多様性を維持している地域(もしくはミトコンドリアDNAの系統図の分岐の元になったタイプの遺伝子を残している地域)が起源の可能性が高いのであって、多い地域が起源ではない。


そういった議論の上で証明されたこととして、いくつかあるのが、1.非アフリカの人類はすべてアフリカから来たこと、2.ヨーロッパに古代から住んでいるタイプが現代のヨーロッパ人につながっている、3.南北アメリカ人はアジアから伝播した、4.ポリネシアメラネシアの人々は海流に乗って東から西に行ったのではなく、西から東に伝播した、というようなことがあります。


これに加えて、最近明確になったこととして、日本の縄文人と弥生人についてもヨーロッパの場合と同様、縄文時代の日本人が現代の日本人につながっている(ミトコンドリアDNAの多様性の維持)ということがあります。


否定されたこと:アイヌが縄文人説。日本人のD4タイプ(30%)が弥生人説。稲作民族による征服説。タミール人説。等々。