日本人の起源

日本人の起源、とか日本人はどこから来たかという質問自体はなかなかよい質問、疑問なのですが、どうもいろいろバイアスがかかって正しく議論がなされていないようです。人はごく自然にバイアスがかかっているものなので、しかたがないのですが、すこし素直に考えてみましょう。


ミトコンドリアDNAを始めとする遺伝子分布を根拠に、中国・韓国から来たとか、南方やシベリアから来たという見解を述べている方が多いですが、意見が一致しないことを見てもあきらかなように遺伝子分布は現在の分布がわかるだけであってそれだけではどこから来たかの証拠にはなりません。遺伝子からわかることは、黒人も白人も黄色人種もみんなアフリカから来たということです。日本人はどこから来たかという質問にはまずアフリカと答えるべきだと思います。


すると、次の疑問がわいて、アフリカを出たころは一つだった人種が肌の色を含めてどうしてこんなに多様化したのか、言葉もどうしてバラバラになったのかということですが、これは遺伝的に浮動(drift)と言って、同値(生き残りのためにメリット・デメリットがとくにない)場合、世代をかさねると容易に特殊化することの結果のようです。数万年という期間の中で、人種や言語が多様化した。ちなみに生物の進化はかつて言われていたように弱肉強食・適者生存ではなく、90%がこの遺伝的浮動によるものだと言われています。だからゴキブリと人間が地球上で共存しているのですね。


日本語の起源がタミール語というのもあながち間違いではない。必ずしも間違っているとは決め付けられない。中国語や韓国語より近くて不思議はないと思います。稲作がらみの単語が同じとか言われると、稲作の歴史の時間枠(数千年)と人類の移動(数万年)の時間枠が合わないので調べる方法論が間違っているのでしょう。つまり言語は数万年さらにはそれ以上しゃべり続けているけれど稲作や狩猟等生きる方法は天候や場所によって数千年の中で激変しているので、人種移動の根拠としては弱いのです。言語ですらですから文化や精神論で起源を語るのには無理がありますね。


時間枠の観点はとても大切です。現在の人類の形、知能になって20万年、世界に広まって数万年。それと比較して歴史として捉えられているのが数千年ですので現在の観点で自分たちがどこから来たのかを考えるには材料が足りなすぎる。なにかがおかしい。海底古代都市とかミトコンドリアDNAとかすごく興味ありますが、注意深く吟味しないと危険だと思います。