楊逸「時が滲む朝」

なかなかおもしろかった。水村美苗を読んだあとなので、若干日本語が気になったけど、薄い本だし、そうめったに取り上げられる課題でもないので、お勧め。前半天安門事件、後半は日本に来て中国の民主化運動をやっていて、だんだん仲間が少なくなって北京オリンピック。わたしとしては前半については、日本でこれほど大々的に天安門事件をとりあげて大丈夫なのがうれしかったのと、後半は日本の中国人社会の雰囲気が想像されてたいへん面白く読めました。どちらかと言えば後半がお勧めかな。


ご存知のように世界中が知っている、というか目の当たりにした天安門事件は中国ではなかったことになっていて、これを認めない限り、中国政府が何を言っても信用できない、という烙印が押されていると思うのですが、そういった政府を担う個々の中国人、中国出身者がどう生きていくかは別問題で、それなりに愛国心とか愛郷心と主義の間で揺れ動いている。日本人から見れば、「共産主義が悪い」の一言で済んでしまいそうなのですが、そうも行かないのでしょうね。なぜだろう。