松藤和人 著
日本と東アジアの旧石器考古学
という本を読みました。
日本、韓国、中国での、100万年前とか数十万年前のいわゆる前期旧石器時代の遺跡の話がたくさん出てきます。
知らない話が多くてなるほどと思う点もないことはないのですが、トータルとしては全く信用ならないと思います。
読んだら自分の意見が変わるかと思っていたのですが、そういうことはなくて、自分の意見は読む前と同じです。
人類はアフリカ単一起源で、10万年前から世界に広がり初めて日本には4万年前ごろに到着。
1万3千年前には南アメリカの南端まで行って世界を制覇した。
日本、韓国、中国で発掘されたとされる4万年前より昔のいわゆる前期旧石器は自然物で、原人とされる骨は別の生物かもしれない。
と思います。
したがって、12万年前とされる島根県出雲市砂原遺跡も信じません。年代測定が間違っているか、そもそも石器でないのだと思います。
一点興味を持ったのが3.5万年前ころからの後期旧石器時代に細石刃技術が普及したと書いてあって、シベリア、中国、朝鮮半島に広く分布するとある。細石刃の石材には黒曜石が使われると思うのですが、黒曜石は成分から産地が特定できるはず。この本にはそのことが書いていないのが不満ですが、今後の研究でわかるといいなと思います。この先生は朝鮮から日本に石器文化も人も来たと思っているらしいのですが、堤隆「列島の考古学 旧石器時代」には九州の腰岳の黒曜石が朝鮮半島の新北遺跡で見つかったと書いてあります(98ページ)。方向が逆ですね。このような情報が広範囲に知りたい。
石器をいくら眺めても、時代測定をいくら重ねても、説得材料としては不足で、ちゃんとした骨が出るとか、黒曜石で代表されるような地域の交流の証拠がみつかるとか、生活がわかる遺跡がみつかるとかしないと、旧石器考古学の未来はないと思います。