ミトコンドリアDNAと現代日本人


「鎌倉時代人と現代日本人、ミトコンドリアDNA同じ特徴」
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200802210093.html
という記事がありました。

篠田謙一(分子人類学)が、神奈川県鎌倉市の由比ケ浜地域の二つの遺跡で発見された鎌倉時代の人骨61体からミトコンドリアDNAを抽出し分析した。 DとGでほぼ3分の1を占め、AよりもBの頻度が高く、M7aの比率も現代の本土日本人とあまり違わなかった。

坂平文博さんが手がけた研究で、室町時代中ごろの製塩集落の遺跡で、49体からDNAデータを得たが、結果は篠田さんが行った鎌倉の分析とほぼ一致した。

ここまでが事実。考察は 「縄文人と弥生人の融合は九州で始まり徐々に東に進んだはずで、中世には現代と同じレベルの融合が関東地方にまで進んでいたことを示している」と篠田さんは判断する、と書いてある。これが間違い。


ミトコンドリアDNAで日本人は16種類のハプログループから成立していて、そのうち現在南方に多いグループと北方に多いグループがあることから、南方系、北方系という言い方がされます。わたしがいつも書いているように、ミトコンドリアDNAは遺伝的浮動がありますので、現在どこに何が多いからと言ってそこから来たわけではない。さらに篠田謙一が別の発表で書いているように縄文人もすでに現代の本土日本人とそれほど違わないハプログループ分布をもっていた。ここから素直に導かれる結論は、血統的には縄文以前の日本人と現代日本人は同じ、ということであって、縄文人、弥生人は血統的な混血ではなく、文化的、生活様式的な変化であった、ということだと思う。これは日本人が特殊だといいたいわけではなく、現代の本土日本人と似たハプログループ分布を持っているのは韓国人と中国の東北人ですので、縄文時代よりはるか以前にこの辺一帯にこのハプログループ分布をもった人たちがいた、ということだと思う。それ以降の変化、分岐は血統的なものではなく文化的なもの。