ドリップコーヒーパックとインスタントコーヒー(粉末)の本質的な違い 〜「マイルド」「リッチ」の意味から豆の種類まで〜

ドリップコーヒーパックとインスタントコーヒー(粉末)の本質的な違い

〜「マイルド」「リッチ」の意味から豆の種類まで〜


はじめに

スーパーでよく見かける「マイルド」「リッチ」。
この違いは単なる“味の雰囲気”ではなく、焙煎度・豆の種類・抽出設計に基づいています。
また、同じ「ブラジル産」と書かれていても、インスタントとドリップでは中身の豆がまったく違うこともあります。


「マイルド」と「リッチ」の違い

項目 マイルド(Mild) リッチ(Rich)
焙煎 中煎り(ミディアム) 深煎り(フルシティ〜フレンチ)
酸味・軽さ・まろやかさ 苦味・コク・重厚感
香り フルーティ/ナッツ ロースト/カラメル
口当たり スッキリ 濃厚・重め

マイルド=酸味とバランス重視リッチ=苦味とコク重視という設計思想。
後者はミルクや砂糖を入れても負けない味になります。


豆の産地と傾向

産地 典型的な特徴 用途傾向
ブラジル ナッツ・まろやか マイルド系の基礎ブレンド
コロンビア 柔らかい酸味 マイルド・中煎り向き
インドネシア(マンデリン) 深い苦味・コク リッチ系
ベトナム 強い苦味(ロブスタ種) 安価・リッチ系ブレンド
エチオピア フルーティ 香り重視系

「マイルドを濃く淹れる」ポイント

マイルドを濃く、かつ雑味を出さずに抽出するには:

要素 目安 ポイント
お湯の温度 90〜95℃ 高めにしてコクを出す
湯量 通常より1〜2割少なく 濃度を上げる
抽出時間 2分半〜3分以内 3分を超えるとえぐみが出る
蒸らし 30秒程度 均等に成分を抽出

長すぎる抽出(3分超)は、クロロゲン酸が分解し苦味・渋味が出る。
「濃くしたい」ときは湯を減らすか粉を増やすほうが安全。


「リッチ+マイルド」のブレンド抽出法

方法①:2袋同時ドリップ

  1. マイルドとリッチを同時に吊るす(左右ずらして)
  2. お湯をゆっくり全体に回しかける
  3. 合計250〜300mlで抽出(1杯分なら250ml程度)

→ それぞれの特徴が自然に融合し、「濃いのに重くない」味に。

方法②:別抽出後に混ぜる

  • マイルドを濃く、リッチを軽く抽出
  • 1:1または2:1で混ぜる

微調整が容易で、好みの比率を探りやすい。


インスタントコーヒーとの決定的な違い

項目 インスタント(例:ネスカフェ ドリップパック
主な豆種 ロブスタ種主体 アラビカ種主体
味の方向 均一・苦味・即席 香り・甘味・立体的
加工法 抽出液を乾燥(フリーズ/スプレー) 挽いた豆を直接抽出
コスト構造 安価・大量生産 少量・豆品質重視

ロブスタとアラビカの違い

種類 特徴 主な用途
アラビカ 香り高く酸味と甘みが調和、上質 ドリップ・スペシャルティ
ロブスタ 苦味・コク強く安価、香り控えめ インスタント・エスプレッソ補助

インスタントに「ブラジル産」と書かれていても、
実際はブラジル産ロブスタ(カネフォラ)であることが多い。


地域別:ネスカフェの味設計

地域 主体豆 味の方向 備考
日本 ロブスタ+アラビカ 5:5 バランス型 ゴールドブレンド標準
アメリ アラビカ高比率 軽く・香り重視 Taster’s Choiceシリーズ
ヨーロッパ北部 アラビカ多め 香り・酸味重視 ドイツ・北欧向け
ヨーロッパ南部 ロブスタ多め 苦味・濃厚 エスプレッソ志向
東南アジア ロブスタ主体 苦味・強カフェイン 3in1が主流

安いドリップパックの注意点

要素 安価品(10〜20円) 中価格帯(30〜80円)
ロブスタ混合 アラビカ主体
内容量 7〜8g 10〜12g
単調・苦味強め 香りと甘みのバランス
保存 長期向け(香り控えめ) 焙煎新鮮・香り重視

安価ドリップ=“形がドリップなだけのロブスタ系”。
味と香りを求めるならアラビカ100%/1袋30円以上を目安に。


まとめ

  • 「マイルド」=中煎り・酸味・まろやか
  • 「リッチ」=深煎り・苦味・コク
  • インスタントはロブスタ主体、ドリップはアラビカ主体
  • 安価ドリップはロブスタ混合が多い
  • 美味しさを求めるなら、豆の種類(アラビカ100%)と価格帯(30円以上)が目安

実践のすすめ

  • 好みのメーカーを見つけたら「マイルド」と「リッチ」を両方試す
  • 自分の理想が中間なら、2種ブレンド抽出で調整
  • 香りを楽しみたいときはドリップ、高速で済ませたい朝はインスタント